株式会社しんこうとは?
株式会社しんこうは、愛知県岡崎市を拠点とする電気工事会社です。看板犬「しんちゃん」——ドライバーとペンチのガンベルト、保安官バッジを身につけたキャラクター——には、「皆さんの命と財産を守る会社」というコンセプトが込められています。
代表の櫻井和穂社長は、職人だったご主人とともに個人事業から会社を育ててきました。ご主人を15年前に亡くしてからは、自らが会社の舵を取っています。年間休日126日、実働7.5時間という業界でも屈指の働きやすさを実現し、社員一人ひとりが「自分のやりたいこと」を大切にできる会社を目指しています。
下請けの最下層で文句ばかり言っていた時代から、どのように今の会社へと変わっていったのか。櫻井社長に、その道のりを伺いました。

「しんちゃん」に込めた、命と財産を守る想い
まず、看板キャラクターの「しんちゃん」がとても印象的です。どんな想いで生まれたんですか?
株式会社しんこう 社長:櫻井 和穂電気屋って、お客様が困った時に電話をしてくる仕事なんです。でも建設会社には、なんとなく喋りにくい雰囲気があって、直接電話しにくいですよね。だから気楽に電話をかけられる状況を、視覚的に作りたいと思って漫画キャラクターを思いついたんです。会社の名前は覚えてもらえなくても、「あの犬のマーク」と覚えてもらえれば。ガンベルトはドライバーとペンチ、バッジは保安官のバッジで「守る」。皆さんの命と財産を守る会社、というコンセプトで作りました。

建設ピラミッド最下層から。文句ばかりだった下請け時代
創業当初から順調だったわけではないと伺いました。どんな時代だったんですか?
株式会社しんこう 社長:櫻井 和穂主人が28歳で独立して、5、6年は個人でやっていましたが、本当に儲かっていませんでした。私たちのような「とっちゃんかぁちゃん」でやる会社は、建設業界のピラミッドで一番最下層なんです。工期が押し迫って人が足りなくなると、高い単価の仲間を頼んで、赤字になっても仕事を終わらせないと次がもらえない。増えた手間を請求しても「減った手間もあるでしょ」と言われて、正規にお金がもらえないこともザラでした。安定した仕事が欲しいから、口答えもできない。誇りも何もなかったんです。ただ文句ばかり言って、全部元請けのせいだと思っていました。

プライドと努力が、夫を「信用される社長」に変えた
そこから、どうやって変わっていったんですか?
株式会社しんこう 社長:櫻井 和穂ある現場監督さんに「電気屋さんも国家試験に受かったんでしょう? なのに設計を元請けに回すの? ご主人プライドないのかね」と言われたんです。その言葉が胸に刺さって。その後、あるお客様から「僕らは素人だから、あなたたちは免許を持っているんだから、自分たちで考えて見積もりを作って」と言われました。主人は元請けに振ればいい仕事を、自分でやらなければいけなくなった。ここからですよね、主人の頑張りは。 現場での経験の蓄積が自信につながって、「しんこうの大将が言うならいいんじゃない」とお客様から信用を得られるようになりました。口は重い人でしたが、亡くなってからも「あの社長は喋らんけど、任せとけば大丈夫」と。プライドと努力、そして人との出会いという運が、文句ばかり言っていた人を信用される社長に変えたんだと思います。

夫の他界、そしてADHDと向き合って
ご主人が亡くなられてから、会社を率いるようになって大変なこともあったのではないですか?
株式会社しんこう 社長:櫻井 和穂私は口で、主人は技術で仕事をしていたので、最初は不安はなかったんです。でも「でも」が入りましたね。ある時、社員に「何人あなたの言葉で人が死んだかわかりますか」と言われて。実は私、ADHDの特性を持っているんです。当時は自覚がありませんでした。「人と人の間には橋があって、相手にはドアがある。社長はその橋を爆走してドアを蹴り破り、中にいる人を振り回している」と言われて。そこから、話す前に「喋ってもいいですか」「これは嫌な言葉ではないですか」と、一つ置いて考える工夫をするようになりました。心療内科も受診しました。自分がADHDだとわかってから、できないことは無理にやらないと決めて、随分と楽になりましたね。

業界No.1の休日数。働き方改革への挑戦
御社は年間休日が125日~126日と、この業界では驚くほど多いですよね。どうやって実現したんですか?
株式会社しんこう 社長:櫻井 和穂以前は年間105日でしたが、完全週休二日制にして 今年は126日になりました。実働は7.5時間で、仕事がない時は5時半きっかりに帰ります。この業界ではピカイチの休みの量だと思います。3K、4Kと言われる業界で「休めない」とみんな言うけれど、3ヶ月くらいかけて少しずつ試してみたら、そんなに売上も利益率も変わらなかった。それなら休んだ方がいいよね、と。お客様のニーズにきちんと応えて相応の対価をいただいているので、赤字にはならないんです。

「やらせる」から「やりたい」へ。個々に目的がある会社
社員の方々が生き生きと働かれている印象があります。何か秘訣はありますか?
株式会社しんこう 社長:櫻井 和穂以前は「社員が豊かに暮らせる会社を作らなければいけない」と気負っていました。でも今は、私自身が自分のやりたいことをやりたいから、パッと仕事を終わらせて帰る。 みんなもそうだよね、という感じなんです。ちゃんと働けば会社が儲かってボーナスも休みも増える。主体が「やらせる」から「やりたい」に変わったんです。個々に目的があって、それがみんな一緒——早く帰りたい、ボーナスが欲しい。だから「それって利益から出すのよね、もったいなくない?」なんて、社員が平気で言うんですよ。それを風通しが良い、と言うんだと後から知りました。





