㈱大和製砥所とは?
㈱大和製砥所は、昭和13年(1938年)創業、今年で88年の歴史を持つ砥石メーカーです。天然砥石ではなく、炭化ケイ素や酸化アルミニウムといった研磨材を用い、粉状の原料を成形し、陶器と同じ窯で焼き上げて砥石をつくっています。金属を磨いたり艶を出したりする工業用の砥石を中心に、お客様の要望に合わせて一から開発するスタイルを大切にしてきました。
ルーツは、手で持って磨く「油砥石」。戦時中には零戦のメンテナンスにも使われたと聞いています。古くから砥石づくりに携わってきた企業です。工業化の発展とともに砥石を進化させ、現在ではホームページに掲載しきれないほど多様な種類の砥石を扱っています。
近年は工業用(BtoB)だけでなく、クラリネットのリードや野球用品を磨く砥石など、一般向け(BtoC)の商品開発にも挑戦。社員からの新商品提案を積極的に採用し、社員一人ひとりが楽しみながらものづくりに取り組む会社です。

砥石という「ニッチな工具」について
砥石製造の会社に初めて出会いました。御社はどんなものをつくっているのでしょうか?
㈱大和製砥所 代表取締役社長:布施俊二金属を磨いたり、艶を出したりする砥石をつくっています。砥石というと天然砥石を鉱山から取ってきて加工するイメージを持たれる方が多いのですが、今は炭化ケイ素や酸化アルミニウムといった硬い人工の研磨材を購入し、それを長石というボンドと混ぜて形を作り、窯で焼き上げてつくります。
窯は、お皿や壺と同じような陶器の窯です。並べて焼き、焼き上がると砥石が完成します。ホームページの冒頭で火が出ているのは、演出のために少し火を出しているものです。
御社は昭和13年創業とのことですが、砥石の歴史も相当長いのですよね?
㈱大和製砥所 代表取締役社長:布施俊二砥石の歴史自体は非常に長く、古い時代には刀を研ぐのにも使われていました。天然砥石ではなく人工で作る技術はアメリカで開発され、日本に持ち込まれたものです。国内で製造するメーカーとしては、昭和13年創業の当社は古い方になります。
当社のルーツは、手で持って磨く油砥石です。機械のメンテナンスに使われたり、包丁も研げますし、機械につければ金属加工もできます。戦時中には零戦に乗って砥石を持ち、メンテナンスをしていたほど、その時代から砥石を作ってきました。そこから工業化の発展とともに多種多様の製品が生まれ、お客様の要望に合わせて一から開発するスタイルになっています。

「変わり種の社長」の歩み
布施社長は6代目とうかがいました。これまでどんな道を歩んでこられたのですか?
㈱大和製砥所 代表取締役社長:布施俊二私は6代目です。布施という苗字で継ぐようになってからは4代目にあたります。奈良県立奈良工業高校の機械科を卒業し、まずはエアインパクトのメーカーで加工の仕事に就きました。その後、靴下の編み機の調整、不動産の仲介、鉄工所など、いろいろな仕事を経験してきました。
ものづくりが好きで、ある程度できるようになると別のことに興味を持ってしまうタイプで、転職も重ねてきました。結婚などのきっかけもあり、父が工場長を務めていた当社に入社しました。そこで開発、生産管理、設備、営業と工場のあらゆることを経験し、10年前、44歳で社長に就任しました。今年で54になります。
いろいろな業種を経験されたことは、今にどう活きていますか?
㈱大和製砥所 代表取締役社長:布施俊二砥石は学生時代に学ぶこともない、ニッチな工具です。けれども、他の業種を数多く経験してきたからこそ、砥石を使ってお客様にいろいろな視点でものを提供できるのではないかと思っています。
経済学や経営学を学んで経営に携わるような道ではなく、ものを作るのが好きで始まった、ある意味「変わり種」の社長です。だからこそ、チャレンジ精神やいろいろなことを知っているという点で、お客様から信頼をいただいています。砥石業界は昭和的なところが強く、私はよく「異端児」のように見られますが、それを魅力に感じてお付き合いいただくメーカーさんもいらっしゃいます。

挑戦を後押しする組織づくり
社長のアクティブな考え方を支える「右腕」の方はいらっしゃいますか?
㈱大和製砥所 代表取締役社長:布施俊二います。4人います。
私のスタイルに憧れて、以前は取引先の営業として来ていた方が転職してきてくれた営業課長
製品開発や現場管理しながら大手企業をサポートする37歳の技術開発係長
未経験ながら強い信念で品質保証部を担う入社8年目38歳の品質保証係長
現場のリーダーとして社員をまとめる37歳の生産技術主任
彼ら以外にも30代後半が中心で、私の考えを受け継ぎ、チャレンジ精神の強い子ばかりが集まっています。
若手が活躍できる環境は、どうやって作ってこられたのですか?
㈱大和製砥所 代表取締役社長:布施俊二全員で70名、うち工場が45名ほどです。50代の私たちの世代は、昔ながらのものづくりで「言われたことしかやらない」という考えが根付いていました。そこで、若い子たちにいろいろなチャレンジを促そうと、安全性委員会などのメンバーを若手で集め、彼らが実践できる環境作りをまず行いました。
私は、若い子ができないのではなく、それを発揮できる舞台を会社が用意していないだけだと思っています。若い子はチャレンジしたいことをたくさん持っています。その声を出してもらい、受け止めて会社としてどうするかを考える。それが私の若手に対する姿勢です。
新卒採用については、どうお考えですか?
㈱大和製砥所 代表取締役社長:布施俊二現在は中途採用が多く、新卒は採っていません。今は50代と30代が固まり、40代が数名という状況で、新卒を採用するのは、少ない年齢層をなくし、年齢層のバランスを整えてからと考えます。
年功序列は採用しておらず、若い子でも課長・部長になれます。だからこそ、後継やバトンタッチが自然に進むよう、年齢層のバランスを大切にしています。実は製造部長が不在なのですが、これは会社が継続できる組織づくりが出来ずに定年退職となったためです。現在は時間をかけながら人を育て、しっかりした組織を作っている最中です。

社員の提案から生まれる砥石
社員の方からの新商品提案が採用されているとうかがいました。どんな仕組みなのですか?
㈱大和製砥所 代表取締役社長:布施俊二社内で新しい砥石の公募を募り、これまでに2つの商品が採用されています。提案が採用されると5万円を支給し、さらに商品化して1年間で100個以上売れれば、その利益の15%を提案者にインセンティブとして還元します。この権利は5年間、5回分獲得できます。
提案がなければ0円だったものが、採用した瞬間に一歩前へ進みます。実際に、提案した女性社員はボーナスが1回増えた感じになっています。
実際に生まれた商品を教えてください。
㈱大和製砥所 代表取締役社長:布施俊二一つはクラリネットやサックスのリードを調整する砥石「ふらっ砥」です。吹奏楽をやっている事務の女性社員の提案で、専用の砥石を作りました。音が良くなると評判になり、プロの方がYouTubeで紹介してくださって広がりました。今では楽器店の店舗(北海道から沖縄まで)やAmazonでも販売しています。彼女は奈良県の中学・高校の吹奏楽部に使用方法の講習と寄付する活動もしています。
もう一つは、野球スパイクの土汚れなどを落とす消しゴム状の砥石「みがくる」です。少年野球をする子どもが道具を手入れする姿を見た社員の提案から生まれました。スニーカーや上履きのゴム部分の汚れも一瞬で落ちるため、社員の子どもの汚れた上履きを会社が買い取り、展示会や実演販売にも使っています。こうした商品が、砥石の可能性を広げてくれています。
職人さんとのつながりから生まれた砥石もあるそうですね。
㈱大和製砥所 代表取締役社長:布施俊二はい。もともと高知県で包丁の研ぎ職人をしていた社員が「砥石を作りたい」と入社してきました。私はそういう子が初めてで、技術部に配属し、砥石の作り方と研磨作用を教え、包丁専用の砥石「鉄の花」を開発してもらいました。堺、新潟の燕三条、岐阜の関、東京の合羽橋などで愛用して頂いたり、当社所在地の香芝市の認定や、ふるさと納税の品として販売してます。
さらに、桂剥きのギネス記録を持つ20代のYouTuber「包丁料理人のおいりさん」に砥石を気に入っていただき、一緒に新しい砥石を開発中です。ちょっとしたつながりが大きな輪になっていく。こうした好循環が生まれるのは、当社の歴史で築き継がれた技術力があったからこそできることであり、私自身がそういう雰囲気を作ってきたのかなとも思っています。

楽しんで働ける会社へ
バスケットボールチームのスポンサーもされているとうかがいました。
㈱大和製砥所 代表取締役社長:布施俊二奈良県のプロバスケットチーム「バンビシャス奈良」と4年ほど前にスポンサー契約をしました。きっかけは、社内にバンビシャス奈良が好きでバスケットをする社員がいたことです。福利厚生で事務所前にバスケットゴールを作り、社員が休み時間にバスケットを楽しんだり、バンビシャス奈良の選手が挨拶に来た際にはシュートを披露してくれたり、年末の家族参加のボウリング大会にも来てくれたりします。
会社は利益を上げること、お客様への信頼や品質を維持することが大切です。同時に、それを支える従業員には楽しんでものを作ってほしい。社長として腕を組んで指示をするのではなく、私自身がハードルを下げて若い社員に声をかけ、一緒に楽しむきっかけにもなっています。
働き方やプライベートについては、どのようにお考えですか?
㈱大和製砥所 代表取締役社長:布施俊二仕事優先ではなく、家庭・プライベート優先で、有給はしっかり取ってほしいと考えています。有給の枠を残さず使っている社員はすごいと思います。「休んだら迷惑をかける」という空気を作る上司には、私が指導を入れます。平日に安くて空いている時に家族と遊びに行けばいい、という考えです。
事前に準備して、お互い様の気持ちでチームワークを大切にすれば、堂々と有給を使えます。実際、社員は「推し活のイベントで有給を使っています」と堂々と言います。私自身も生田絵梨花さんの推し活をしていて、みんなに伝えてライブに行きます。社長だからと構えるのではなく、社長も同じように楽しめる会社でありたいのです。責任は重い立場ですが、中身は同じ人間。楽しむ時は楽しみ、やる時はやる。そんなメリハリを大切にしています。
学生に対しては、どんな思いをお持ちですか?
㈱大和製砥所 代表取締役社長:布施俊二奈良高専などへのサポートもしており、地元・奈良県のつながりを大切にしています。学生の方には、当社がどんな会社かを知ってほしいと思っています。工場でどんな社員が、どんなふうに働いているのか、若い子が多いことも、ぜひ実際に見てもらいたいです。砥石に興味を持ってくれる子がいれば、遠慮なく来てほしいくらいです。砥石を知ってもらえることが、私にとって何より嬉しいことです。





