株式会社ヨシハラシステムズとは?
株式会社ヨシハラシステムズは、滋賀県を拠点にクリーニング事業を展開する創業三代目の会社です。個人宅への訪問(外交)から始まり、店舗型を経て、現在は宅配クリーニングサービス「せんたく便」を軸に事業を広げています。
大きな特徴は、クリーニングという伝統的な事業とITを掛け合わせている点です。社長自身がIT出身であり、宅配クリーニングに特化したSaaS「クリーニングドットショップ」の開発など、業界の中でも独自の存在感を放っています。
従業員はアルバイト・パートを含めて約270名。工場・店舗・ネットサービスと多種多様な業務を抱えながら、時代の変化に合わせてクリーニングの新しいかたちを追い求めている会社です。

「せんたく便」はどのように生まれたのか
まず「せんたく便」がどんなサービスで、なぜ生まれたのかをお聞かせいただけますか。
株式会社ヨシハラシステムズ 社長:吉原 保一番大きな理由は、もともと私がITをやっていたことです。父が亡くなってから会社を引き継いだのですが、実際に中を見てみると、あまり良い状況ではありませんでした。資金に余裕がある会社でもなく、借金もありましたし、社員もいない状態でした。
まずは売上を作らなければなりません。当時、店舗以外に売上を上げる手段があまりなかったため、ホームページを作るという、自分の得意なことから始めました。サービスの設計からシステムまで、開発に1年ほどかけて、引き継いでから約1年後の2009年1月にサービスをリリースしました。
料金体系に工夫があると伺いました。どういった考えで設計されたのでしょうか。
株式会社ヨシハラシステムズ 社長:吉原 保クリーニングは本来、対面のやりとりが前提です。店舗や外交であれば、スタッフがお客様の商品を見て「ここにシミがありますね」と直接確認できます。しかしネットでは荷物だけを回収するため、こうしたやりとりが難しくなります。
店舗でも、スタッフによって「ワイシャツ」「シャツ」「ブラウス」といった認識が若干違い、お客様から「前はこうだった」というお声をいただくことがありました。ネットではこの問題がより難しくなると考え、点数での料金設定にしました。
「10点パック」として、10点でいくらという料金にする
何を入れてもよいので、料金が明朗になる
点数なら、お客様も会社側も間違えにくい
ネットで展開したことと、この料金体系にしたことが大きかったと思います。

25歳でITの世界へ。原点はWindows95との出会い
社長は25歳でIT会社を立ち上げられたそうですね。僕も今25歳なのですが、そもそもなぜIT会社を始められたのですか。
株式会社ヨシハラシステムズ 社長:吉原 保最初は京セラの塚口工場に勤めていました。私は高卒で就職したのですが、工場勤務は朝が早く、あまり長く勤めるのは向いていないと感じていました。人から言われてやるのも得意なタイプではなかったのです。
小学生の頃からコンピューターが好きで、当時NECのPC-8801やPC-9801といった機種がありました。実家がクリーニング工場の二階で、事務所と住まいが一緒だったので、父が事務作業用に買ったPCを夜な夜な触らせてもらっていました。そういう環境だったので、コンピューターにはとても興味がありました。
そこから起業につながる転機はどこにあったのでしょうか。
株式会社ヨシハラシステムズ 社長:吉原 保20歳のとき、ちょうどWindows95が出た年でした。インターネットとは何だろうと興味を持ち、30万円ほどしたPCを思い切って買いました。実際に触れてみると、閉ざされたPC環境からいろいろな情報が入ってくることに衝撃を受けました。
そこから自分でホームページを作り始め、地元のスーパーに「ホームページを作りますよ」と営業しました。当時はまだそうした商売自体がなかった時代です。1998年ごろからはレンタル掲示板サイトを自分で作り、いろいろな人に貸し出していました。
その後、モバイルへ展開されたと伺いました。
株式会社ヨシハラシステムズ 社長:吉原 保1999年にiモードが出ました。ドコモが初めて出したインターネット対応の携帯端末です。PCのレンタル掲示板は競合も多かったので、一気にモバイルへシフトしようと考えました。
「iボード」というサービスを作ったところ、これが当たり、月間で約60万ビューになりました。さらに携帯だけでホームページが作れる「ポケットスペース」も展開し、年間で約1億ビューほどになりました。人のホームページを請け負うより、自分たちでコンテンツを作ってきたのです。
2000年から10年ほど続けましたが、初代iPhoneが出た頃、コンテンツ力が伴わないと難しいと感じ始めていました。そこにITバブルの流れで買収の話があり、会社を売却しました。

工場・IT・クリーニング。時代の変化にどう向き合うか
工場勤務、IT、そしてクリーニングと、まったく畑違いの世界を渡り歩いてこられました。事業承継のときは不安もあったのではないですか。
株式会社ヨシハラシステムズ 社長:吉原 保不安のほうが大きかったかもしれません。ただ、以前ITの会社を経営していたので「なんとかなるかな」という気持ちもありました。とはいえお金の面は、どれくらい必要かも見えていなかったので、やはり不安がありました。
タイミングとして、ちょうど会社を売却して次に何をしようかという頃だったのです。もしすでに別のことをやっていたら、クリーニングはやっていなかったかもしれません。
今はAIの時代ですが、抑えきれない衝動のようなものはありませんか。
株式会社ヨシハラシステムズ 社長:吉原 保むしろ、かなり使っています。AIを組み込んだサービスの開発を進めていて、せんたく便のプロモーションでSNSの自動投稿やコラムの自動生成なども試みています。普通にプログラムを書く際にもAIに書かせていて、めちゃくちゃ楽になりました。ホームページのバナーなども全部AIで作っています。
少人数でも仕事の幅がぐっと広がりました。
継いだ今、この会社をどうしていきたいとお考えですか。
株式会社ヨシハラシステムズ 社長:吉原 保クリーニング業界はITっぽくない世界です。だからこそ「クリーニング×IT」という形にすると、全国の中でもキラッと光るものがあり、注目されやすくなります。
宅配クリーニングに特化したSaaS「クリーニングドットショップ」は、せんたく便と同等以上のことができるサービスですが、こうしたものは国内にありません。やりたい人自体は少ないのですが、そういう人は必ずうちにたどり着いてくる。オンリーワンの状況なので、悪くはないと思っています。
目指すところに対して、ジレンマを感じることはありますか。
株式会社ヨシハラシステムズ 社長:吉原 保ITだけなら開発と営業くらいで済みますが、クリーニングは工場を持って現場を回さなければなりません。会社の中に多種多様な業務があるので、その点は大変です。
従業員はアルバイト・パートを含めて約270名います。店舗は滋賀県だけですが、私自身がなかなか行けないため、顔を見たことのない従業員もいます。大きな大会社でもないのにそういう状況になるので、もっと顔の見える状況を作らなければいけないと思っています。

クリーニングの未来と、学生へのメッセージ
一周回って、あらためて御社の魅力を聞かせていただけますか。
株式会社ヨシハラシステムズ 社長:吉原 保クリーニングのサービスは、時代とともに形を変えてきました。一代目の頃は個人宅を回る外交でした。当時は三世代で暮らす家が多く、誰かが必ず家にいたので配達が成り立ちました。
やがてダイエーのような総合スーパーが登場し、テナントに入る店舗型へと移りました。さらに核家族化・単身世帯化で留守がちな家が増え、お店に持ち込むスタイルが主流になりました。そして今、ネットで物を買うのが当たり前になったように、クリーニングも直接お客様のところへ取りに行き配達する形へ変わっていくと考えています。これから、せんたく便の時代が来ると思っています。
一人暮らしの方などにはニーズが高そうですね。
株式会社ヨシハラシステムズ 社長:吉原 保クリーニングは物と違い、生活コストなので「安くしたい」というニーズがあります。一方で、必要なとき以外はあえて探しに行かないサービスでもあります。
美容系のように自分を良くするものはバズりやすいのですが、生活コストのサービスはなかなかバズりにくく、知らない人が多い。そこが特徴だと思っています。
将来の選択肢に迷う学生に向けて、アドバイスをいただけますか。
株式会社ヨシハラシステムズ 社長:吉原 保単純かもしれませんが、迷ったらやったほうがいいと思います。リスクを考えて行動しないのは、あまり良くありません。私も思い立ったらすぐやってしまうタイプです。
全部がうまくいく人などいません。100やって1つうまくいくくらいの感覚です。チャレンジして、うまくいかなかった経験は必ず自分の糧になります。逆に、経験しないことのほうがリスクです。
最近はSNSやYouTubeで自分の趣向のものばかり見るので、情報が偏りがちです。学生のうちから好奇心を持ち、チャレンジ精神を大切にしてほしいと思います。
最後に、社長の考える「お金」との向き合い方も印象的でした。
株式会社ヨシハラシステムズ 社長:吉原 保お金は幸せになるためにあります。お金を稼ぐために生きているわけではありません。ただ、お金が少ないと自分のやりたいこともできないので、一定の富はやはり必要だと思っています。




