ワイズEC株式会社とは?
ワイズEC株式会社は、発電所や変電所の電気工事を主な事業とする会社です。家庭の照明やコンセントを扱う電気工事とは違い、電気そのものの大元にあたる設備を相手にする、まさにインフラの現場を担っています。
創業は代表・矢辺卓哉さんのお父様で、現在は25〜26年目。創業から20年が経った頃に矢辺さんがバトンを受け取り、経営者になって6年目を迎えました。社員18人、役員4人、パートを含めて合計27人で運営しています。
今回は、東京で働いたのち家業を継いだ矢辺さんに、仕事の中身、経営者としての苦労、そして将来の進路に迷う学生へのメッセージを伺いました。

電気が必ず集まる場所、変電所で働くということ
具体的にはどのような工事をされているのでしょうか。
ワイズEC株式会社 代表取締役:矢辺 卓哉中心は発電所や変電所の電気工事です。電気を切ったり入れたりする家庭でいうブレーカーのような遮断器といった機器の撤去・据付作業、それに付随するケーブル撤去・布設。そして機械が回路どおりに動くかの点検などを行っています。
遠隔で動く設備もあるのですね。
ワイズEC株式会社 代表取締役:矢辺 卓哉そうなんです。たとえば米子の変電所にある機器は、中国電力さんが広島から操作することができます。その回路をつくるためのケーブルを取り替える作業などを、私たちが担っています。
変電所は電気が必ず集まる場所です。矢辺さんは「電気の大元のライフラインのところで仕事をしている」と語ります。なかなか知ってもらう機会がない分野ですが、社会の土台を支える仕事です。

東京から地元へ。家業を継いだ理由
入社までの経緯を教えてください。
ワイズEC株式会社 代表取締役:矢辺 卓哉会社ができたのは私が大学生になった頃で、父が電気の仕事をしていることは知っていても、その分野には興味がなく、継いでほしいと言われたこともありませんでした。大学で東京に出て、そのままベンチャー企業などで好きなように働いていました。
戻るきっかけは何だったのですか。
ワイズEC株式会社 代表取締役:矢辺 卓哉東京の暮らしに違和感が積み重なったことです。お金がないと人とつながりにくいこと、自然に触れるには電車で出かけなければならないこと、スーパーの野菜に匂いがないこと。会社を辞めて自分で料理をしたとき、実家の裏でとれる野菜との違いを強く感じ、東京の暮らしは豊かではない。東京の生活で得られる豊かさは、自分が求める豊かさとは違うと思ったことが一番のきっかけです。
長男で姉妹がいることから、いずれ実家に帰る必要があるとも考えていました。2011年2月末に会社を辞め、直後の東日本大震災で日本の電気事情や原発への関心も高まり、帰る決断をします。
そして何よりも決め手は親への感謝でした。東京で自由に挑戦できたのは、親が応援して背中を押してくれたからだし、失敗しても帰れる場所があるという安心感があったからだと矢辺さんは話します。

事故の経験と、ルールへの向き合い方
これまでで一番きつかった経験は何でしょうか。
ワイズEC株式会社 代表取締役:矢辺 卓哉入社して数年経った後、作業帰りに高速道路で、幸いにも大きな事故にはならなかったのですが、車のキャリアに載せた脚立を落としてしまう事故を起こしてしまいました。キャリアに脚立を載せたのは私ではなかったのですが、運転者として脚立が固定されているか確認を忘れていました。たかが確認と思っているフシがあったのだと思います。何でもできると根拠のない自信を持っていたのですが、この仕事をする上では、確認はしすぎることはないと思い知らされました。
ワイズECでは他社の事故事例の共有することが多く行われているとのこと。明日は我が身と1つの事故・品質不適合で、仕事がなくなるという思いが会社に根づいています。
業界に入って戸惑ったことはありますか。
ワイズEC株式会社 代表取締役:矢辺 卓哉ベンチャー時代は「ルールは破るもの、新しいことをしないと価値がない」と考えていましたし、自分もそうありたいと考えていました。ところが建設業のルールは、過去の事故の積み重ねから生まれたもの。「新しいことで価値を作り出すというより、過去の経験から積み上げたものを尊重する」という建設業の価値観が自分のありたい姿と合わず苦しみましたが、その背景を理解できるまでが一番しんどかったです。

採用の難しさと、会社の魅力が伝わらないもどかしさ
経営者として今の悩みは何ですか。
ワイズEC株式会社 代表取締役:矢辺 卓哉一番は会社の知名度です。良い仕事をしているのに理解してもらえず、採用が厳しくなっています。高校生と話す機会があっても応募につながらず、どうすれば良いイメージを持ってもらえるのか迷っています。
2年前はIndeedで応募が来ていたのに、今は応募があっても連絡が取れなかったり、面接の約束をしても来なかったりすることがあります。そこで、必ず一度電話で話してから選考に進めるなどの工夫をしています。
求人では条件面が重視されると聞きますが。
ワイズEC株式会社 代表取締役:矢辺 卓哉求人媒体の担当者からは、年間休日の多さや土日休み、賞与の回数が人気だと言われます。条件も大切ですが、それ以上に、人柄が合うか、会社の取り組みに共感できるか、社員同士、上長や社長と相性が合うかを見てほしいですね。
SNSについても、アカウントは作ったものの、現場が忙しく運用が追いついていません。顧客の設備で作業するため、作業写真を気軽に載せられないという事情もあり、方針は手探りの状態です。

これから伸びる仕事、減る仕事
進路に迷う学生にアドバイスをお願いします。
ワイズEC株式会社 代表取締役:矢辺 卓哉経済産業省のデータでは、2040年には事務系の職種で400万人ほどが余るとされています。反対に足りなくなるのは、AI・ロボットの技術者、建設業をはじめとする現場の作業員、製造業の人材です。学歴で見ても、大卒の文系は余り、工業高校、高専、大卒の理系が不足すると言われています。
営業やマーケティングなどの仕事が悪いわけではありません。ただ、AIに取って代わられやすい分野でもあるため、よほど自信がない限りはおすすめしないと矢辺さんは話します。そのうえで、AI・ロボット分野か建設業を選べば「食いっぱぐれない」と語ります。
特にワイズECのようなインフラ系の工事会社は、電気がなくならない限り仕事がなくならない、公務員のような安定感があるそうです。手に職をつければ、長く働き続けられます。

現場職を志す学生へのメッセージ
現場の仕事は「きつい、汚い、危険」の3Kと言われてきました。しかし矢辺さんは、待遇は少しずつ変わってきており、最近はブルーカラーで年収1000万円という夢のある話も出てきていると言います。
そして、自身が入社してから気づいたことがあります。誰もが何不自由なく電気を使え、AIを使い、デスクワークの仕事ができるのは、現場で働く人たちがいるからです。その大切さに、もっと多くの人に気づいてほしいと話します。
「『人々の生活を支える』という誇りや生き様が、次の世代の仕事の選択肢として増えてほしい」。大学を出ていても、この仕事は十分にできます。文系で何をしたいか分からない人、とにかく自分の力で食べていく技術を身につけたい人も、この分野に来てくれれば大切に育てる、と矢辺さんは力強く語ってくれました。
選択肢のひとつとして、ぜひ現場の仕事に目を向けてみてください。






