株式会社小田原工務店とは?
株式会社小田原工務店は、木造住宅を中心に手がける建設・工事の会社です。断熱性・耐震性・省エネ性に優れた「スーパーウォール工法」を採用し、室内の空気環境や温度環境にまでこだわった住まいづくりを続けています。
同社が大切にしているのは「正しいものを提供できる会社でありたい」という信念です。断熱性能や耐震等級といった数字で語れる家であること、そして実際に住んだ人が快適だと感じられる暮らしを届けること。その両方を追求する姿勢が、施工の分野で表彰を受けるなど、確かな評価につながっています。
社長が語るのは、住宅業界のあり方への問題意識と、これからの時代を生きる若い世代へのメッセージです。今回は、家業を継いだ経緯から業界の課題、キャリアの考え方まで、率直な言葉でお話を伺いました。

家業を継ぐまでの道のり
まず事業のきっかけといいますか、最初はどのように始まったのかをお伺いしたいです。
株式会社小田原工務店 代表取締役:小田原 勤もともと父がやっていた会社で、その後を継いだというのが現在の状況です。
いろいろな方を取材していると「最初はやる気があったわけじゃなかった」という方が多いのですが、小田原さんはいかがでしたか?
株式会社小田原工務店 代表取締役:小田原 勤その家の長男として生まれたので、当然跡継ぎとして期待はされていたと思います。ただ、その部分がすごく嫌で、口実を作って高校卒業と同時に大阪へ行きました。
大阪では何をされていたんですか?
株式会社小田原工務店 代表取締役:小田原 勤本当は音楽関係など、建築ではない世界に行きたかったんです。ただそれを言っても家から出してもらえないので、建築の専門学校に行くという体で大阪に出ました。学校にはとりあえず入学はしましたが、音楽方面のコネができたらいいなと思いつつも行動力はなく、新たに知り合った友達とつるんで遊んでいました。
では、継ぐことになったきっかけは何だったのでしょうか?
株式会社小田原工務店 代表取締役:小田原 勤継ごうと思ったというより、父の事業状況があまり良くなかったらしいんです。将来の跡継ぎがいるかいないかによって銀行の対応も変わるという話を母から聞かされて、米子に息子がいるということが事業存続にプラスに働くと。親の会社が潰れるのは困るので、それなら帰るかと。今から思えば多分嘘だったと思いますが、それで帰りました。
木造との出会いと代替わり
米子に帰られてすぐに家業に入られたのでしょうか?
株式会社小田原工務店 代表取締役:小田原 勤いえ、親の会社ではなく、建築の設計事務所に入社しました。父とそこの社長が仲が良く、大阪で遊んでいる息子が居るらしいが帰らせて手伝わせてみないか、という話があったようです。『設計事務所』と聞くとカッコ良さそうの思えたので帰りましたが、その時も跡を継ぐつもりは全くありませんでした。
そこでの経験が転機になったのですか?
株式会社小田原工務店 代表取締役:小田原 勤鉄骨やコンクリートの物件や大きな建物の図面を手伝う中で、木造の現場もありました。木造の図面を描いているときが一番テンションが上がるというか、楽しいなと思っていたんです。結果的に木や木造が好きなんだと気づき、その頃には反骨精神もなくなっていたので、木造をより深く学ぶために実家で仕事をしてみようと思いました。
代替わりはどのタイミングだったのでしょうか?
株式会社小田原工務店 代表取締役:小田原 勤40歳で代替わりしたのですが、父が体調を崩したため仕方なく、という感じでした。
そんな代替わりではありましたが、しっかり旗を振れる人になろう!と決意したのを覚えています。

「正しい住宅」への転換
会社の仕組みを変えたり、新しい施策を打ち出したりということはありましたか?
株式会社小田原工務店 代表取締役:小田原 勤家業に帰ってから2年ほどは流されながら仕事をしていました。ただ住宅を勉強すると、当時、先進国の中で日本だけが室内空気環境に対して規制がなかったんです。
それはどういうことでしょうか。
株式会社小田原工務店 代表取締役:小田原 勤「シックハウス」という言葉が出始めた頃でした。日本の住宅はボンドや接着剤など有害物質がある状態のまま建てていくのに、換気をきちんとしましょう、この物質は使うのをやめましょう、ということがまだ法律になっていなかったんです。日本で規制していたのは13物質ほどでしたが、実際はもっと多くの物質があり、誰が何に反応するかもわからない。欧米に比べて日本の住宅はよろしくないなと思いました。
そこから今の工法にたどり着いたのですね。
株式会社小田原工務店 代表取締役:小田原 勤弊社で標準としているスーパーウォール工法の説明を最初に受けたとき、「換気扇が綺麗に動く家」だと聞いたんです。本来は断熱性や耐震性に優れ、そこがストロングポイントなのですが、私はどちらかというと綺麗な空気が吸える家という点に魅力を感じて、32歳の頃に取り組み始めました。
すぐに受け入れられたのでしょうか。
株式会社小田原工務店 代表取締役:小田原 勤金額だけで見ると安くは無いので、なかなか認めてもらうのは難しかったです。大きく動いたのは東日本大震災でした。原発問題があり、日本がエネルギー事情を真剣に考え始めたとき、スーパーウォール工法は低燃費で、空調効率や空気環境が良く、地震にも耐える住宅です。省エネで安全な家が求められ始め、そこから少しずつ世間のニーズと私たちのやってきたことが合い始めました。

「正しさ」とは何か
地元でどういう企業であり続けたいか、業界の中でどんな位置づけでいたいかを教えてください。
株式会社小田原工務店 代表取締役:小田原 勤目立ちたいとか、ナンバーワンになりたいという願望はありません。ただ、正しいものを提供できる会社でありたいと思っています。
その「正しさ」とは、具体的にどういうことでしょうか。
株式会社小田原工務店 代表取締役:小田原 勤住宅業界には、これまで「結構強いです」「結構あたたかいです」といった曖昧な物差ししかありませんでした。それがここ数年で、断熱性能のU値や、耐震性の耐震等級など、性能が数字で明示されるようになってきたんです。2025年から性能は義務化になりましたが、急激な変化に業界がまだ追従できていないのが実態です。
株式会社小田原工務店 代表取締役:小田原 勤お施主様は性能値が欲しいわけではなく、良い暮らしが欲しいんです。快適な暮らしを得られた人はやはり喜んでくれます。いい数字の家を建てても快適でなければ不満が残る。私たちが言う正しさとは、お客様が求めているものの、より上を行きたいということです。
環境性能が注目されて、業界には追い風になっているのでしょうか?
株式会社小田原工務店 代表取締役:小田原 勤いえ、今は業界自体が低迷しています。性能を上げるという事は良質な材料を使う事になります。ところが物価高により家全体の材料が高くなり、金利上昇で住宅ローンの負担も増えています。収入は変わっていないので、今住宅を欲しがる人はよほど収入が安定した人か、それなりの支払いを覚悟できる人じゃないと難しい状況です。
費用の面で他社を選ぶ方もいるのでしょうか。
株式会社小田原工務店 代表取締役:小田原 勤おられます。ただ、見積もりを見て他社に行った人が、自分の友達にうちの会社を紹介してくれるという実態もあるんです。「家を考えるなら一度小田原の話を聞いてみたら」と。正しさは理解しているけれど所得が追いついていない。紹介はありがたいけれど、万人に手が届くわけではないところがもどかしいですね。
安く作れるという選択肢もある中で、どう考えていらっしゃいますか。
株式会社小田原工務店 代表取締役:小田原 勤安く提供するには原価を下げる必要があります。
私どもなりに建材メーカーや業者さんとその都度話し合いながら原価を下げる努力をしています。
そんな中で安いと感じる予算に合わせるためには、私が思う正しさを犠牲にしないと折り合いがつかないと思います。
価格やビジュアルを優先したがために性能を犠牲にした家を選んでしまうと、暑い時期や寒い時期に
「なぜうちの家はこんなに暑いのか、エアコンが効かない」
となってしまう。車で言えば、どのメーカーでもちゃんと走るという前提があるように、家もちゃんと住まえるのが前提であるべきなんです。

会社の風土と採用への考え
小田原工務店さんの良さはどんなところにあるとお考えですか?
株式会社小田原工務店 代表取締役:小田原 勤良さは、人がいいことですね。協力し合って、一つの理念に沿ってみんな行動してくれています。人をおとしめるようなことをする人はいませんし、一人が困っていれば手を差し伸べる。そういう風土はあると思います。
採用に関して、意識して取り組んでいることはありますか?
株式会社小田原工務店 代表取締役:小田原 勤特段ないんです。実はリクルーティングをしたことがないんですよ。人の紹介で来たり、自分から見つけてきたり、学校の先生が推薦してくれたりというケースばかりで。
業界の課題としてはどんなことがありますか?
株式会社小田原工務店 代表取締役:小田原 勤我々のような中小零細はOJTの準備が乏しく、まだ「見て覚えろ」という部分が強いです。新人に中堅やベテランをあてがって教育していくほどの時間も人的余裕もありません。だからこそ欲しいのは自ら学んで力を付けてきた即戦力、もしくは早く即戦力になる気概を持ったアグレッシブな新卒です。
株式会社小田原工務店 代表取締役:小田原 勤今はYouTubeで建設現場のことも調べられます。予習なく来て、ジェネレーションギャップやマインドの違いに驚かれても、採用した側も困ってしまう。
就職はほぼ結婚のようなものです。毎日一緒に過ごします。
結婚前の恋愛時に会話して波長が合うか確かめるように、条件面だけで就職先を決めず、せめてインターンを経験し会社の理念と空気を肌で感じるぐらいはしてほしい。
これは業界としても、我が社としても大きな課題だと思います。

これからの時代を生きる若い世代へ
やりたいことがないという若手も多いのですが、そうした学生さんにどんな考え方を伝えたいですか?
株式会社小田原工務店 代表取締役:小田原 勤私たちはできればセカンドキャリア、サードキャリアの人と一緒に仕事をしたいと考えています。
今やりたいことが見つからなくても世に出ればいろんな問題に直面すると思います。
その時に自己成長するでしょうし、自分の能力やあらゆる事とのマッチング、そして自分のやりがいが見つかるんじゃないでしょうか
株式会社小田原工務店 代表取締役:小田原 勤最初に就職した会社で永遠に勤める世の中でもなくなっています。
マッチングに気づくまで3年、5年かかるかもしれませんが、大学新卒でもまだ25~27歳です。
世の中を変えてやろう、自分の力はここで発揮できる、と気づいても全然遅くない。
むしろそういう志を持った瞬間が、自分の成長につながるポイントだと思います。まずは自分が良さそうだと思うところに身を置いてみて、そこで気づきを得ることが大事です。
最後に、迷っている方へ伝えたいことをお願いします。
株式会社小田原工務店 代表取締役:小田原 勤迷っている時、時間やお金などいろんなしがらみで前に出られないことはあります。
それでも「ここだ」と思ったときに一歩前に行ける胆力を鍛えておいてほしいです。 日常打破するだけでも大いなる一歩だと思うんです。その一歩が踏み出せれば何かの活路は見いだせる。
チャンスは向こうからやってくるものではないので、待たずに自分からアクションを起こすことが大事だと思います。




