株式会社茂呂製作所とは?
株式会社茂呂製作所は、山梨県韮崎市を拠点とする創業57年の金属加工メーカーです。図面を描く設計から、ものを作る製造、販売、そして機械の修理・アフターフォローまでを、すべて自社の中で一貫して手がけています。中小の製造業では「作るだけ」「組み立てるだけ」という会社が多いなか、まるで大手メーカーのように上流から下流までを担っているのが大きな特徴です。
とりわけ力を入れているのが「機械修理」の領域です。他社が作った機械であっても、これまで培ってきた経験と知見を武器に修理・復活させます。全国の同業者をつなぐポータルサイト「機械修理ドットコム」の運営にも関わり、技術と人材のシェアによって「どの地域でも、どんな機械でも、本当に必要なら直す」という仕組みづくりに取り組んでいます。
その根底にあるのは、社長の「学校の先生になりたい」という原点です。人材育成・技術継承が遅れているといわれる製造業界において、経験を次の世代へ受け渡すことを自らの役目と捉えています。ものづくりの現場に光を当てる同社の姿勢は、就活生にとって多くの示唆を与えてくれるはずです。

設計から修理まで、すべてを自社で担う
まず、御社の事業内容を学生にもわかるように教えていただけますか?
株式会社茂呂製作所 代表取締役:茂呂 哲也茂呂製作所は、まるで大手メーカーのように、自分のところで絵(図面)を描いて、そのものを作り、販売し、最後はアフターフォローという修理までを、本当に自社の中で一貫してやっている会社です。
製造業の中小企業というと、作っているだけ、絵を描いているだけ、組み立てをしているだけ、という会社が多いと思います。当社は、ものを作る前の段階、つまり作りたい人とお客様との架け橋になる図面を描く設計という部門から、いろいろな機械を修理するところまでをやっています。ちいさな会社ですが、メーカーのようなことをすべて自分のところでやっているのが特徴です。
そのなかでも、いちばんやりたいことは何なのでしょうか?
株式会社茂呂製作所 代表取締役:茂呂 哲也基本的には一貫したものづくりがメインになりますが、当社が一番やりたいのは、実は機械を修理するというところです。

「他社の機械」を直すという特殊な仕事
直近では、どんなものを手がけられたんですか? 面白そうな話がありそうで気になります。
株式会社茂呂製作所 代表取締役:茂呂 哲也作る方でいうと、クッキーの真ん中に赤いジャムが乗っているものがありますよね。あのジャムをクッキーの上に適量落とす、充填するという装置を、あるお客様のためだけに作りました。
以前には、誰でも知っているような検査装置メーカーさんから、そのメーカーのお客さんの要望に応えるために「うちのもののコピーを作ってくれ」という依頼が来たこともあります。メーカーは売れ筋のサイズしか作りません。たとえば600ミリ角の検査装置しかないところを、お客様がどうしても800ミリまでやりたいという。そこで当社が、そのお客様のためだけにまるごとコピーを作りました。
他社が作ったものを直すって、そもそもできるものなんですか?
株式会社茂呂製作所 代表取締役:茂呂 哲也できます。よく驚かれますが、当社はよその会社が作ったものを修理するんです。ただし、できないこともあります。理由は二つで、部品が手に入らない場合と、目に見えないものの場合です。
電気は目に見えませんよね。メーカーは自分の技術力を守るために必ずブラックボックスを作ります。昔はそれをメカで作っていたので、経験さえあれば八割方はわかります。日本の機械には一定のルールがあり、目に見えるものであれば答えは自ずと出てくるからです。ですが、目に見えない電気的なものは、くじ引き修理になってしまい、どうにもならないことがあります。
業界全体として、修理できる人が減っているんでしょうか?
株式会社茂呂製作所 代表取締役:茂呂 哲也自分のところの機械なのに直せないという会社さんが、実は多いです。理由は二つあります。
技術がわからなくなってしまった(ブラックボックス化)
人手そのものがいない
いまは人手不足というより、技術者不足になっているんです。そこにビジネスチャンスがあると踏んで、当社は「機械修理屋です」と打ち出し、キャラクターのメンテマンを掲げてやっています。また15年前に、自分とお客様の困りごとを解決するために、当社のような会社を全国でつなぐ機械修理ドットコムというポータルサイトも立ち上げました。経験と、経験を持った人材をシェアすることで、どの地域のどんな機械でも、本当に必要なら直しましょうという事業をやっています。

一人前になるまでの時間と、仕事の本質
素人から技術者になるには、どれくらいかかるものなんでしょう?
株式会社茂呂製作所 代表取締役:茂呂 哲也日本的な考え方だと「5年、10年」と言われますが、お寿司屋さんの話と同じで、「10年かかる」も「1週間でできる」も、逆に言えば両方合っているのかなと思います。
私の言い方では、正しい基礎があれば、そこからはやっていけます。正しい道具を安全に使い、やり方を教われば、あとはそれを早く覚えて一人でできるようになるかどうかで、一人前になる差は変わります。一概には言えません。
実際、ある機械を使いこなすのに、日本人の高校生の男の子が4年かかったのに、ミャンマー人の女の子が8ヶ月で使えるようになった事例もあります。だから「何年かかる」という問いには、本当は答えがないんです。
そもそも「仕事」って何だろう、と考えることはありますか?
株式会社茂呂製作所 代表取締役:茂呂 哲也仕事という言葉は「仕えること」なので、人の言うことを聞くことになります。人間は本来、自分勝手に生きたいものですから、「右向け」と言われて喜ぶ人はいません。それでも、誰かのためにやるという考えを持ち、その人が「ありがとう」と言ってくれて、なおかつお金をくれる。だから修理の仕事は、めちゃくちゃ楽しいんです。
「継ぎたくなかった」経営者が代を継いだ理由
社長は2011年に代を継がれたそうですが、当時はどんな心境だったんですか?
株式会社茂呂製作所 代表取締役:茂呂 哲也私は勉強も努力も嫌いで、正直、父から離れた人生でした。父からは「大手の会社に行った方が給料もボーナスも確実にもらえるから、絶対そっちに行け」と言われていたんです。
ところが、ある有名な大手メーカーの工場でアルバイトをしたとき、熱した銅のパイプをペンチで右から左へ移すだけの仕事を3日間やって、「無理無理無理」と思ってしまった。それで、行くところが茂呂製作所しかなくなったんです。当初は「稼がなきゃ」という一番底辺の意識でやっていました。
そこから、どう気持ちが切り替わったんですか?
株式会社茂呂製作所 代表取締役:茂呂 哲也ある時、子供の頃の作文を見たら、「学校の先生になりたい」と書いてあったんです。ほぼ同じタイミングで、初めてベトナムの日本語学校を見学に行きました。
技能実習生の子たちの前で日本のことを説明したのですが、得意の日本語で全く伝わらなかった。悔しくて翌日も行き、先生をやらせてもらったら、人生で一番疲れました。でも、その子たちは「製造業のことを知りたいから、もっと話してくれ」と一生懸命言ってくれる。そこで「先生ってこういうことなんだ、こんな喜びがあるんだ」と気づいたんです。
会社をやっていれば、私は先生としていろいろなことに関われる。従業員の成長にも関われる。そう思ったら「よし、やろう」と切り替わり、2010年頃に父に「継がせてくれ」と伝えました。父は「ぜひ継いでくれ」と言ってくれました。父にはチャンスをもらった、という言葉をずっと言い続けています。
5年後、10年後、そして100年後へ
これから茂呂製作所として、どんな企業であり続けたいですか?
株式会社茂呂製作所 代表取締役:茂呂 哲也私のやりたいことは、やはり学校の先生です。いまだに日本は技術者育成が遅れていると思っています。当社は絵を描くところから最後までやってきた経験があるので、その経験を継承するのが私の役目だと思っています。
修理をする、事務をするというよりは、それを教える、保管しておく会社になっていきたい。相手が求めるのは安心安全ですから、「茂呂のところに来れば必ず一流の技術者になれて、一生困らない」と自他ともに認められる状態をつくる。その準備を進めています。
子供たちに現場を見せる、という構想もあるそうですね。
株式会社茂呂製作所 代表取締役:茂呂 哲也キッザニアのように、子供が仕事を体験できる場を、公的機関とともにやりたいと思っています。地域ではオープンファクトリーにも取り組んでいます。
私が子供の頃は、小学校で工場見学にたくさん行けました。パン工場を見て「パン屋さんになりたい」と思う子と、「パン嫌い」となる子に分かれる。でも、それがわかるから選べるんです。いまは、親も学校も危ないから行かせたくない、会社も何かあったら困るから受け入れたくない、という制約が多すぎて、若者が選べない。それはかわいそうだと思っています。
私が通う美容院に、断トツで優秀な新人の女の子がいます。小学2年生のときから美容師を目指していたそうで、両親が働く美容院に託児所があり、楽しそうに働く姿を見て育ったからだと。だから姿勢が違うんです。そういう「本物を見せる場」をつくっていきたいと思っています。
最後に、ものづくりの魅力を学生に伝えるとしたら?
株式会社茂呂製作所 代表取締役:茂呂 哲也ものづくりは、1万円を1000万円に変えられる世界です。株では1万円は1万100円にしかならず、多くの人がやるから上がっていくだけで、半分の人は負けます。それより、ちょっとだけ苦労して1万円を1000万円にしようよ、と。
もう一つ言うと、日本だけを見ていてはダメです。日本は世界の一国にすぎません。日本は特殊なものを作っているのだから、世界に売るものがいっぱいあるはずなんです。




