株式会社NY電気とは?
株式会社NY電気は、神奈川県横浜市に本社を構え、沖縄県にも支店を持つ電気工事会社だ。
その始まりには、海を越えて受け継がれてきた家族の歴史がある。沖縄にルーツを持ち、ブラジルで生まれ育った創業者夫妻が、2007年に神奈川の地で同社を設立。一つひとつの現場で実績を重ね、会社の基盤を築いてきた。2027年には設立20周年の節目を迎える。
手がけるのは、商業施設や店舗の新装・改修工事から、マンションやオフィスビルなどの新築工事まで、幅広い電気設備工事だ。照明・コンセント設備をはじめ、幹線、動力、分電盤、弱電設備などに対応している。
特に商業施設や店舗の電気工事では、営業への影響を最小限に抑えながら、限られた時間で施工を進めることが求められる。夜間の作業も少なくない。そうした現場で培ってきた段取り力と対応力が、同社の強みとなっている。その経験は新築工事にも生かされ、現在は新築工事でも多くの実績を重ねている。
従業員は横浜本社と沖縄支店を合わせて33名。現場の職人を中心に、施工管理や管理部門が連携して日々の工事を支えている。今後は新築工事や大型案件への取り組みを強化し、事業の拡大に合わせて新たな地域への支店展開も視野に入れているという。
現在、経営を担うのは、創業者の息子である二代目代表取締役・山城栄信社長だ。現場で経験を積み、経営者となった山城社長は、どのような思いで会社を受け継いだのだろうか。

現場で学んだ、諦めないということ
山城社長は、NY電気に正式に入社する以前から、若い頃より電気工事の現場に立ってきた。入社後も職人として経験を重ね、工事部部長を経て、二代目代表取締役に就任している。
その歩みのなかで、今も強く印象に残っている仕事がある。初めて職長を任された、商業施設の大規模な幹線工事だ。
幹線とは、建物全体に電気を送り届けるための太い電線のこと。建物の心臓を支えるともいえる、重要な設備だ。
現場では十数人の作業員をまとめ、数か月にわたって数百本規模のケーブルを延線していった。1本で100メートルを超えるものも多く、一般の住宅とは比べものにならない太さのケーブルが中心だった。
初めて職長を務める緊張と、責任の重さ。そこに限られた工期という条件も重なった。山城社長は毎晩のように、翌日の延線方法や作業の段取り、準備、人員配置を考え続けたという。
周囲の職人たちの作業方法や経験者の知恵、作業動画なども参考にしながら、少しでも良い方法を探した。得た知識や工夫を現場で試し、うまくいかなければ、その場で修正する。そうした試行錯誤を重ねながら、工事を進めていった。
当時は、年齢の若さや経験の浅さだけで、自分の力を判断されたくないという思いもあった。だからこそ、言葉で理解を求めるのではなく、自ら行動し、結果を積み重ねることで周囲の信頼を得ていったという。
「ここで諦めたら、その先の自分が見えないと思った」
当時の心境を、山城社長はそう振り返る。数か月に及ぶ工事だったが、終わってみると、まるで一日だったかのように感じるほど濃密な時間だったという。
段取りと準備の大切さ、人をまとめる責任、そして目の前の課題から逃げずに向き合う姿勢。この現場で得たものは、その後の仕事の土台になった。
山城社長が自らの信条として挙げるのは、「諦めが嫌い」という言葉だ。
「やってみないとわからない世界があります。最初から否定論に入るのではなく、まず行動することを大切にしています」
創業者である父への尊敬の念は強い。その一方で、父が築いてきた実績をいつか超えたいという思いも抱いてきた。
年齢や経験だけで、人の可能性は決まらない。大切なのは、そこから何を学び、どう行動し、結果につなげていくか――。当時の経験から生まれたその考えは、社員と向き合う今も変わらないという。

「背中を見て覚える」を超えて――NYアカデミーという取り組み
山城社長自身は、先輩の仕事を見て覚える、いわゆる「背中を見て覚える」環境で育ち、現場で苦労しながら技術を身につけてきた。その経験は、現在の人材育成に対する考え方にも影響している。
現場で学んだことは大きな財産だ。しかし、後輩たちに同じ苦労をそのまま味わわせたいわけではない。人によって学び方は違う。現場での経験を大切にしながらも、基礎から学べる環境を整えたい――。そうした考えから始まったのが、社内教育制度「NYアカデミー」だ。
勉強会は週2回。教育の柱は「技術教育」と「日本語教育」の二つだ。
技術教育では、電気の基礎知識や材料・工具の扱い方、図面の読み方から、結線・圧着・器具の取り付けといった基本作業までを段階的に学ぶ。図面をもとに配線し、検査まで行う実践的な課題にも取り組んでいる。
日本語教育では、外国籍の社員が現場で安全に働き、周囲と円滑に意思疎通できるよう、仕事に必要な日本語の習得を支援している。将来的には、職長などの責任ある立場を目指せるようになることも期待しているという。
講師を務めるのは幹部や職長だ。現場で培った知識や経験を、後輩たちに直接伝えている。山城社長自身も時間が許す限り参加し、教える内容や教え方の改善を重ねている。
「まだ完成版ではありません」
そう語る山城社長。社員によって経験も理解度も異なるからこそ、より良い教え方を今も探り続けている。

未経験から、職長・施工管理・幹部へ
山城社長が描くのは、未経験で入社した社員でも、経験を積みながら職長や施工管理、さらには幹部へと進んでいける会社だ。
社長一人の力で会社を大きくするのではなく、社員それぞれが技術を磨き、現場を任される存在へと育っていく。そうした組織を目指しているという。
電気工事の仕事は、技術を身につけた先に、現場をまとめる職長や工事全体を管理する施工管理など、役割を広げていける仕事でもある。見習いから電気工事士、職長、施工管理へ――。その道筋を社員一人ひとりが思い描けるよう、環境づくりを進めている。
その一つが資格取得の支援だ。電気工事士や電気工事施工管理技士など、仕事に必要な資格取得を会社全体で支援しており、上位資格である1級電気工事施工管理技士を目指す社員も後押ししている。
あわせて現在は、人事評価制度の整備にも取り組んでいる。社員が自分の今の技術や課題を知り、次に何を身につければよいかを明確にするためだ。将来的には、NYアカデミーでの学びと評価を連動させ、身につけた力が処遇にもつながる仕組みを目指しているという。

経験よりも、学ぶ意欲を――NY電気が求める仲間
現在、NY電気では20代後半から40代前半の社員が中心となって現場を支えている。次の世代を担う人材をどう迎え、育てていくかは、山城社長にとって大きなテーマだ。
これまで求人媒体を使った採用にも取り組んできたが、費用をかけても思うような結果につながらないことがあったという。
「結局、いちばん効果があるのは知人の紹介なんです」
いまは、知人や社員とのつながりから生まれる出会いを大切にしている。仕事の内容や会社の雰囲気をよく知ったうえで、仲間として加わってもらうことを重視しているという。
山城社長が人を見るとき、経験や資格だけで判断することはない。大切にしているのは、学ぶ意欲と、自分から動く姿勢、そして新しい仕事に取り組もうとする気持ちだ。
経験がなくても、仕事を覚えながら、将来は職長や施工管理を目指していける。同社では、そのための土台づくりを進めている。

次の一歩へ
これから社会に出る若者に向けて、山城社長が伝えたいのは、失敗を恐れず、まず一歩を踏み出してほしいということだ。初めて職長を任された現場で、毎晩のように翌日の段取りを考え続けた経験を持つからこそ、最初の一歩の大切さを実感している。
商業施設や店舗の電気工事に加え、新築工事も数多く手がけるNY電気。今後も双方の事業を強化し、社員一人ひとりが成長できる会社づくりを進めていく。
山城社長が大切にしているのは、限られた時間の中で学び、考え、行動し続けること。そして、家族や社員、顧客をはじめ、会社を支えてくれる人たちへの感謝を忘れず、その信頼に結果で応えていくことだ。
できない理由より、できる方法を考える。
その姿勢を大切にしながら、山城社長は社員とともに、NY電気の次の一歩を踏み出していく。






